僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……はーあ。なんでこうなったかね」
嘲笑しながらジッポを鳴らし、煙草に火を点ける。そのままヒカリが落ちたであろう場所を見下ろした。
痛いくらいに速まる鼓動が、忘れるなと言っている。あの日起きたことの全てを。
「……ごめんな、ヒカリ。俺はきっと、アンタを悲しませてるよな」
それでも止まらないんだ。消えないんだ、2年経っても。
憎くて、憎くて、たまらない。
親父も、天野も。母さんも枢稀も。
……俺自身も。
「俺は……ヒカリみたいに輝けねぇんだよ」
深く、黒く。海底のような暗闇に、堕ちるばかりで。
……だから、もう。終わりにする。
中途半端な自分に、弱い自分に。
憎しみに、終止符を。
「アンタが言ってたこと、正しかったよ」
だけど、ごめん。
だから、ごめん。
今日はそれを言いに来たんだ。わざわざ命日に、なんて。本当に俺はどうしようもない。
「……今日で、全部消す」
短くなった煙草が手から離れ、屋上から真っすぐ、真っすぐ落ちて、紅が消えていった。それを見てから、俺は屋上の出口に向かう。
――音もなく流れる泪は、心の奥底で叫ぶ声を、打ち拉ぐものにさえ感じた。
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