僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……はーあ。なんでこうなったかね」


嘲笑しながらジッポを鳴らし、煙草に火を点ける。そのままヒカリが落ちたであろう場所を見下ろした。


痛いくらいに速まる鼓動が、忘れるなと言っている。あの日起きたことの全てを。


「……ごめんな、ヒカリ。俺はきっと、アンタを悲しませてるよな」


それでも止まらないんだ。消えないんだ、2年経っても。


憎くて、憎くて、たまらない。


親父も、天野も。母さんも枢稀も。


……俺自身も。


「俺は……ヒカリみたいに輝けねぇんだよ」


深く、黒く。海底のような暗闇に、堕ちるばかりで。


……だから、もう。終わりにする。

中途半端な自分に、弱い自分に。

憎しみに、終止符を。


「アンタが言ってたこと、正しかったよ」


だけど、ごめん。

だから、ごめん。


今日はそれを言いに来たんだ。わざわざ命日に、なんて。本当に俺はどうしようもない。


「……今日で、全部消す」


短くなった煙草が手から離れ、屋上から真っすぐ、真っすぐ落ちて、紅が消えていった。それを見てから、俺は屋上の出口に向かう。



――音もなく流れる泪は、心の奥底で叫ぶ声を、打ち拉ぐものにさえ感じた。



.
< 235 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop