僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
夜明けより遙か
◆Said:有須
「お疲れー! 気をつけて帰るんだよー」
部活が終わり、あたしを含む1年生は部室から出ていく2年生に頭を下げる。
志帆先輩とは気まずいものの、大雅先輩が何か言ってくれたからなのか、必要最低限の会話はするようになった。
あの出来事が嘘だったかのように、あたしは問題なく部に顔を出せている。
「有須、ほんとに本当にいいの? 鍵お願いしちゃって」
ブレザーに腕を通した時、香織が部室の鍵を回しながら話しかけてくる。
「うん、ちょっと職員室に用あるから。ついでだし大丈夫」
「そう? じゃあお願いするね。ありがとうっ」
他の子にも次々をお礼を言われ、「ううん、いいよ!」と両手を左右に振った。
――枢稀さん、残ってるかな。
香織たちと別れたあたしは体育教官室に部室の鍵を返してから、校舎を目指す。
朝には決めていた。
昨日マンションを出て行った祠稀の居場所を知らないか、それとなく枢稀さんに聞いてみようって。
あたしにできることは、きっとそのくらいしかないから。
「……よし」
両手をぎゅっと握りしめて、職員玄関から校舎内に踏み込んだ。