僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「じゃあ行きましょうか」
「とりあえず、捕まえたら親御さんに連絡か、反省文あたりですかね」
はははは……と、人気のない廊下に先生たちの笑い声がやけに大きく響く。
あたしは職員室のドアに手をかける直前で、動きを止めてしまった。
「しかし、そうそういるもんですかねぇ? あの歓楽街にウチの生徒なんて」
ガラッと開いたドアの向こうで、あたしを見つけた先生が目を見張る。
「阿じゃないか。どうした」
「部活、終わったのか?」
先生たちはあたしが職員室前にいることは気にもせずに、次々と言葉を投げかけてくる。
ドクドクと鳴る心臓のせいで上擦るんじゃないかと思えた声は、案外ふつうに出すことができた。
「あの、お疲れさまです。……これから見回りですか?」
ざっと見渡すと、ほとんど1年生の担任をしてる先生たちだった。それが逆に助けにはなったけれど、焦りが募るものでもあった。
「ああ。ほら、大半の生徒は通学途中に歓楽街がある駅を通るだろう。最近そこに、うちの制服を着た子らを見かけたと、枢稀先生に聞いたもんでなぁ」
「……あは。そんな生徒いるんですか? あそこ、怖くないですか?」
「ははは。まあ阿は安心だけどなぁ。そういえば、日向は反省しているか?」
あ、そっか。この先生はあたしたちが一緒に住んでること、知ってるんだっけ。