僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……そんなこと言ったら、チカ泣いちゃうよ?」

「……」


ユナが俺を見上げながら笑って、自分の手のひらを見たかと思うと、指折り数え始める。


「祠稀はー、憧れで、尊敬する人で、救ってくれた人で、一生ついて行きたくて、居場所を与えてくれた人で、本当のお兄ちゃんみたいなんだーって言ってたよ?」

「俺は最初、祠稀にマジ惚れしてるんじゃないかと思ったね。すげー嬉しそうなんだぜ?」


じんわりと、胸に広がる熱。

リュウもユナも、止まることなく彗の話までし出す。


「彗もさー。あ、彗は今日初めて会ったんだけど。チカが知将だから1番あてになるって紹介してきたから、どんな切れ者かと思ったら。なんだあの天然記念物は」

「……頭いいくせに、どっか抜けてる奴なんだよ」

「でも彗もね、言ってたよ。あ、でもちょっと怒ってたかも。ね?」


……怒ってた?


リュウを見ると、思い出したのか、笑いながら口を開いた。


「俺の時は助けておいて、自分の時は何もさせないなんて、ありえないってよ。ホントは昨日、見つけたらボコッてでも家に連れて帰るつもりだったんだと」

「あとね、祠稀は湯たんぽって言ってたよ。意味分かんなかったけど」

「……ああ。アイツ、眠くなるとすぐ抱き付いてくるから……」


うまく、笑えたはずなのに。ユナは微笑んで、リュウは余計な言葉を言う。
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