僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「祠稀も、祠稀が守りたいものも、俺が全部守るよ……そう言ってただろ、ヒカリの奴。2年前、ヒカリは一度のチャンスを与えた」
――まさか。と思ったけど……ユナが持つ書類を見た瞬間、それは確信に変わっていた。
俺は唇を噛んで、涙を堪える。
「威光史上もっとも長い猶予期間に、幕を下ろす覚悟はあるか」
バサッと俺の膝に現れたのは、2年前毎日のように見ていた、写真付きの書類。威光の、仕事。
――親父と、天野のデータ……。
「お前は、自分が虐待されてたことは言わなくていい。ヒカリはそれを望んでた。お前が、母親と兄貴を守りたいと知ってたから。だから、暴かれるのは裏カジノと闇金のことだけ……っても、他にもいろいろあるんだけどな」
涙が溢れて止まらなかった。嬉しいのか、悲しいのか分からないけど。2年前のヒカリが、ここにいる気がした。
「……ユナも、リュウもね。祠稀と、祠稀の守りたいものを、守るために来たんだよ。……ヒカリも一緒、きっと」
――ああ、うん。
きっと、いてくれる。
リュウってば格好いいー!とか言いながら、ユナの頭を撫でて。俺の今の外見を見たら、そんなに俺が好きなのぉ~?って、ニヤニヤしながら笑うんだ。
嬉しそうに、幸せそうに。笑ってくれてる。
そして2年前と同じことを、言ってくれるんだ。
『祠稀、大丈夫。ちゃんと歩いて。まっすぐ、前だけ見て。強く、進んで。祠稀には、そういう生き方をしてほしいんだ』
――生きるさ、そんな風に。
ヒカリに負けないくらいに、強く、まっすぐ、進んでみせる。
だけど追いかけるのは、もうやめる。ヒカリと並んで、今と並んで、歩き出す。
1歩1歩、強く踏み締めて。
どこまでも前へ、前へ。
限られた時間の中を歩いていこう。
いくつもの守りたいものと、共に。