僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「リュウさんとユナさんは帰ったの?」
「……ああ。……彗と有須は?」
「病院の前でじゃんけんしてる」
「……は?」
「チカと遊志と大雅も来てて、大勢じゃ迷惑だからーって。誰が先に行くか、じゃんけん」
「……なんだそれ。勝ったわけ? 凪が最初に」
そう思って聞くと、凪は隣のベッドに腰かけて「まさか」と笑った。
「じゃんけん始めた瞬間に置いてきた。祠稀しかいない病室なのに、誰に迷惑かけるのよ」
そりゃそうだ。
心の中で相槌を打ちながら、俺は布団から脚を出して、凪と向かい合う。凪は首に巻いたアフガンストールに触れながら、組んだ脚を揺らしている。
「……悪かった」
「……ん?」
落ち着きない体の動きを止めて、届いたはずなのに聞き返してきた凪に、俺は「いや……」と答える。
「学校、サボらせて悪かったな」
苦笑いしたのは、凪たちが学校をサボってでも来ると、当たり前のように思っていた自分がいたから。
今までのことを謝っても、凪はどうせ謝るなと言うって分かっていたから。
しょーもない言葉しか出てこなかった自分に、苦笑いするしかなかった。
「別にいいよ。1日くらい学校サボったって、死ぬわけじゃないんだし」
凪も、本当は俺が別のことを謝りたかったんだと分かっていて、笑ってくれるのかもしれない。
俺も微笑み返すと、凪は一度視線を落としてから、再び組んだほうの脚を揺らし始めた。