僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「でも、祠稀がいなくなったらって考えると、死にそうになる」
「……」
「寂しくて、死にそうになるよ」
思わず凪から目を逸らしてしまって、口の端を上げた。
ニヤけたわけでも、おかしかったわけでもない。どんな表情をすればいいのか分からなかった。
「ねえ……祠稀は、何も怖くないって、命すら惜しくないって言うみたいに生きてるけど。生きたいくせに、守りたいものがあるくせに、命をかけてどうするのよ。生きながら守り抜くって選択肢だって、あるでしょう?」
「……ほんと、ヒカリかって」
ぽつりと呟いてから目を合わせると、「凪ですけど」と口を尖らせられる。俺は眉を下げて、笑みに決意を託した。
「守り切ってから、死ぬよ」
「死にもの狂いで生きてね」
「なんだそれ」
鼻で笑うと、凪も微笑む。まるでその場だけが、凪を含むその周りだけが、別空間のように耀いて見えて。眩しくなんてないはずなのに、目を細めた。
「……俺、いつか許せるって、思ってるよ」
ベッドの上で胡坐をかきながら言うと、凪の視線を感じる。俺は窓の外を見ながら、やわらかい感じのする薄い雲を見上げた。
どこまでも真っ青な空に白い雲はよく映えて、どこまでも、飛んでいけそうな気がした。
「……許すとはちげぇかな。できれば忘れたいし、ヒカリは戻ってこねえし。でもそういうの全部ひっくるめて、俺だから。まだまだ生きてやろうと思う。……ひとりじゃねーし」
チカがいる。仲間がいる。母さんも、枢稀も。リュウとユナも戻ってきてくれた。