僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「ありがとう。……って言ったら、泣くと思ったわ」
振り返るとやっぱり凪は泣いていて、バリエーションのねえ奴だなと笑いながら、凪が作ったココアが飲みたいと思った。
――コンコン。
「はい?」
ドアがノックされると凪は急いで涙を拭い、俺は返事をした。ドアが開き、そこに立っていたのは枢稀と。
「……母さん」
枢稀の押す車椅子に、母さんが座っていた。
もう、戻ってきて大丈夫なのか?
昨日、親父に隣の県まで連れ回された母さんは、保護された時には衰弱していて、近くの病院に暫くいると聞かされていたのに。
「っ! 立つなって!」
よろめきながら立ちあがった母さんに慌てて駆け寄ると、白く細い腕が俺の体を引き寄せる。
「……祠稀っ、ごめんね!」
「……何言って……」
「ごめんね、ごめんなさい……っ」
「……いいから、座れって」
首に回された腕を解いて、母さんをベッドに座らせる。謝られる意味も、泣かれる意味も、分かっていたけど。
俺は勝手なことをしたから、母さんが本当はどう思ってるのか。それを今、聞かなければならないんだ。
涙を流す母さんの足元に膝をつき、見上げる。
とても綺麗な顔に傷がついていないことに安心して、俺から先に口を開いた。
「……勝手なことしてごめん。でも、後悔してない」
そう言うと、母さんは首を横に振って、顔を手で覆ってしまった。
「後悔するのは、あたしだけでいいの……祠稀は何も悪くないもの……っ」
「……でも、好きだったんだろ」
言われなくても、なんとなく分かっていた。