僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「泣いてねーよ!」


嬉し涙なら、いいと思うけどな。


「ははっ。涙目の祠稀くん、貴重すぎて面白いね」

「写メってOK!? えぇやんな!? 弱味ゲッグフォッ!」

「うっせーんだよ! 受験生は帰って勉強しろ!」

「やっだちょっと、嫌味ー!? 勉強せんでも俺コネ、イタタタタ! ちょんまげ引っ張らんといて!」

「空気読めよオレンジ頭!」


笑い声が響く病室で、あたしは空を見上げた。


――今日は、とてもよく晴れてる。


青い空を、白いペンキで塗ったような、輪郭がはっきりしてる薄い雲が、遠く遠く、吸い込まれるように流れている。


夜は明ける。

いつだって、変わることなく。



ニュースで騒がれてる“DAWN”は、自警団の名前でもなんでもない。リュウさんが祠稀のために考えた、ヒカリさんへの餞。


“夜明け”


2年前、終わらせることのできなかった仕事を片づけて。


2年間、祠稀を苦しめ続けたものは光に溶かされて。


ヒカリさんがいなくても闇夜の威光は在り続け、夜が明けるたび、ヒカリさんを想おう。


星が瞬く夜も。太陽の光が降り注ぐ朝も、昼も。


夜明けより遙か、遙か先。


幾度も繰り返すその日々を、祠稀は笑顔で過ごしていく。


たくさんの人に愛されながら。


それを糧にした輝きで周りを照らしながら。


祠稀は生きていく。



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