僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
幾星霜の夜想曲
◆Side:凪
――10月末。
朝晩は冷え、最高気温も10℃までいかなくなってきた頃。今日は祠稀のお母さんの退院日だ。
「おばさんって、どんな病気だったの?」
「んーと、縦隔腫瘍……で、悪性か良性か画像じゃ判断しづらくて、悪性だとまずいから早めの手術をって話だったらしいけど、良性だったんだって」
「……結構早く退院できるんだね」
あれから1週間。おばさんはすぐに手術を行い、祠稀の謹慎も解け、祠稀はチカの荷物を家に運ぶ手伝いをしたり、リュウさんやユナさんと会ってるみたいだった。
マンションには簡単な荷物を1度取りに来ただけで、学校にも顔を出さない祠稀とは4日ぶりに会うことになる。
「……あ、来た」
病院の待合室で待っていたあたしたちは、遠目に祠稀とお母さん、枢稀さんとチカを見つけて立ち上がる。祠稀があたしたちに気付いて、笑顔をたたえていた。
「ワリィな、わざわざ」
「……痛い。なんで。いひゃい」
近付いていった彗の頬を抓る祠稀は元気そうだ。
「あの、これっ。退院おめでとうございます!」
「わ、ありがとうっ」
有須が来る途中で買ってきた花束を渡すと、おばさんは頬をピンクに染めて微笑む。
すると、おばさんはあたしを見て、おずおずと目の前まで歩み寄ってきた。