僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「あの、きちんと挨拶してなくて……祠稀がお世話にな……きゃあ!」
「いいっつーの、そういうのは!」
「でででも、こういうのはきちんと……っ」
「はいはい。行って行って」
あたしに挨拶してくれようとしたんだろうけど、祠稀がおばさんの背中を押して、枢稀さんのほうへ追いやってしまった。
「何照れてんのさ。祠稀ってば、ダサッ!」
「お前も早く行け!」
フードを掴もうとする祠稀の手を避けながら、チカはあたしたちに「またね」と笑い、枢稀さんとおばさんの背中を追いかけて行く。
それを見送った祠稀はあたしたちに振り向き、どことなくバツが悪そうな顔をした。
「あー……まあ、アレだ」
「……どれ?」
ゆるりとした彗の突っ込みを、祠稀は「うっせ」と一蹴し、デニムのポケットに両手を突っ込むと言葉を探すように俯いた。
……あ。
初めて会った時と、同じ仕草だ。
彗と6年ぶりの再会をした後に買い物へ行って、マンションへ帰ると、あたしたちの家の前に座る人影があって。
「ありがとーな」
今と同じ、
『今日からよろしく』
無邪気な笑顔で言ったんだ。
――ああ、そっか。
もう、この笑顔を見られないんだ。
「……なんで泣くんだよ、アホ凪」
「泣いてないし」
「一生会えなくなるわけじゃねぇだろ」
うるさい。分かってるよ。
でも朝起きたらいないじゃん。家に帰ったら、いないじゃん。
そんなの、寂しすぎる。