僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


体が一瞬、後ろに仰け反るほど力強く引き寄せられて、耳に感じる吐息に無条件にドキリとさせられた。


「また、明日な」


そう囁かれ、離れ際に祠稀の長い髪が頬を撫でる。


彗と有須にも同じように言って去って行く祠稀の後ろ姿を見ながら、あたしは熱くなった耳を押さえた。


「……なんて言われたの?」

「……凪、真っ赤だよ?」

「……祠稀は、ああやって女の子を誑かしてるんだと思う」

「た、たぶらか……!」


有須が赤くなってくれたおかげで、あたしの顔の熱は引いていく。一度大きく息を吸い込んでから、両頬を音が出るくらい叩いた。


あたしの気合いを入れる方法。


ちょっと、いやだいぶ頬は痛いけど。祠稀と暮らせなくなったのは、寂しいけど。


平気。大丈夫。


祠稀とは学校で会える。彗と、有須がいる。チカにも、ついでに遊志と大雅にも、いつだって会える。


「よっし! あたしたちも帰るよ!」

「……無駄に元気にならなくていいのに」

「なな、凪、痛くないの…?」


大丈夫、大丈夫。


あたしは今日も、笑ってる。

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