僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
――――…
「呼ばれて飛び出てジャジャジャ……遊志やでぇー!」
「……なんだ、遊志か」
夜、スーパーに赴いたあたしの横から、なぜかペットボトルを2本持った遊志が出てきた。
呼ばれてー…の声で誰だか分かったから、たいして驚きもしなかったけど。
「何だってなんなん!? 俺じゃ不満!?」
「どうせなら魔法使い遊志がよかったかな」
カゴに野菜を入れながら歩くと、後ろから遊志が顔を覗いてくる。あたしはあちこちに視線を動かして、あと必要なものはなんだったか眉を寄せた。
「凪ぃ~……」
「んー?」
「実は俺……魔法使いやねん」
「ぶはっ! バカ!」
声を出して笑ったのに遊志はぎこちなく微笑むだけで、あたしは首を傾げる。
「何? どしたの?」
「いんや~? 姫さんは元気がないなーと思っただけやで」
「……姫って。それ、有須に言う言葉」
やめてほしい。
そんな、あたしのことはなんでも分かるって顔。
ごまかしても通じない人は、彗だけで充分なのに。
「まあ確かに、元気いっぱいなわけじゃないけどね」
必要なものが思い出せなくて、あたしは逃げるようにレジへ向かう。当たり前に遊志は付いてきたけれど、いつもの調子で話しかけてくるわけじゃない。
「……そんなに祠稀くんが出てったんが寂しいん?」
「寂しいよ。当たり前じゃん、4月からずっと一緒だったんだから」
店員の値段を言う声と、ピッ、ピッという機械音が、もっと大きければいいのにと思う。
あたしは上がるだけの会計を見ながら、遊志の顔を見ずに言った。