僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「今までそばにいた人がいなくなるって、寂しいじゃん」
「……ほんなら、俺が離れたら寂しい?」
「お会計、2874円になります」
遊志の言葉に被るように店員が言い、3千円を出して、お釣りを受け取る。
赤いエコバッグを肩にかけて歩き出すと、遊志は隣に並びスーパーを出るまで黙っていた。
冷たい風に目を細めると、「あれ?」と大雅の声。
「遅いと思ったら、凪ちゃんに会ったんだ」
「……なんだ。ふたりで遊んでたの?」
「まあそんなところ。遊志、飲み物は?」
「んー」
あ、それ買ったやつだったのか。
呑気にそんなことを思っていると、大雅がペットボトルのキャップを捻りながら笑う。
「遊志、何拗ねてんの」
「ほっといてぇやー!」
「言われなくても。凪ちゃんは? 夕飯の買い出し?」
膨れっ面になる遊志を横目で見ながら、大雅に頷いた。
「冷蔵庫見たら何もなくてさ。ここんとこ忙しかったし」
「ああそっか、祠稀くん出て……ああ、なるほどね」
大雅がわざとらしく遊志を見遣って、悪役みたいに口の端を上げる。
「じゃあ、あたし帰るね。彗がお腹空かせてるから」
「うん、気を付けて」
「……凪のバカッ!」
歩き出そうとしたあたしは、遊志に目を注いだ。
先ほどの答えを、とても自己中心的な言葉を、言うために。
「寂しいよ。凄く」
目を見開いた遊志は、すぐに背を向けたあたしを、どんな表情で、どんな想いで見たんだろう。
喜んだ?
それとも、不満に思った?
……どっちでもいい。どっちでもいいから。
離れないで。
離さないで。
誰もあたしから、離れたりしないで。
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