僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「おー彗。サボりなんて珍しいな」

「……祠稀が呼んだんじゃん」


決して温かいとは言えない、かと言ってもの凄く寒いわけではない屋上に入った瞬間、フェンスに寄りかかっていた祠稀が右腕を上げる。


俺は祠稀の隣まで歩き、フェンスに肘をついた。


校舎からは1時間目の始まりを告げるチャイムが響き、生徒の大半は狭い机と椅子に溜め息をつきながら、嫌々教科書を開くんだろう。


「……元気?」


残響が残る空気の中で、俺は祠稀の顔を見ずに問う。隣から足元に移動した祠稀の気配は、もう学校でしか感じることができない。


ジッポの音がすれば、祠稀は一度煙草を吸うまで口を開かないことは分かっていたから、俺も地面に腰を下ろした。


「ふつう」


サイドにひと括りにした祠稀の髪の毛が少し、くるんと巻かれているのに気付いた。


「毛先ハネてる。寝坊したから朝のホームルームにいなかったの?」

「ダルかっただけですー」

「……凪は今日、休みだよ」


カシャンとフェンスにもたれかかると、祠稀は俺の顔を見て「なんで」と聞いてくる。


本当は朝一で凪と会うのが恥ずかしくてホームルームに来なかったのかなと思ってたけど、どうかな。


「……体調悪いだけ。寝不足で」

「あー。凪ってけっこう夜型だもんな」

「お見舞い来る?」

「話飛んだな。見舞うほどじゃねぇんだろ?」

「……うん。まあ、帰ったら元気になってるとは思うけど」


「ならいいべや」と言う祠稀は、煙草を空き缶の中へ落とす。それを見つめていると、祠稀の視線を感じて顔を上げた。


じっと見てくるだけで、いつまで経っても口を開く気配はない。
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