僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……大丈夫、俺も好き」
「いやなんの話だよ!」
「……え。熱視線を向けてくるから」
「熱視線ってお前……」
脱力する祠稀に首を傾げると、首筋を撫でた風が肌寒く感じた。少し身を縮こませると、それに気付いた祠稀が笑いながら口を開く。
「お前の頭ん中、見えねーかなーと思って」
「……頭は割らないで」
「そういう意味じゃねーよ!」
ベシッ!と頭を叩かれて眉を寄せると、祠稀は大袈裟に溜め息をつきながら、耳の後ろを掻いた。
「なんつうかさぁ。彗って、有須のこと好きだったりする?」
唐突な質問に目を丸くさせてから、祠稀の言った言葉をよく考える。
質問の意味ではなく、なんでそんな質問をしてきたのか。すぐに行きついた答えに、俺が思ったことはひとつだった。
――複雑。
「……好きか嫌いかで言ったら、好きだよ」
「ふーん。……凪は? 好きだろ?」
「……好きか、嫌いかだったら? それとも、異性として?」
質問を返した俺に、今度は祠稀が目を丸くする。黙ったかと思うと、「やーめた」と体の後ろへ手をつき、まっすぐに俺を見てくる。
できれば聞きたくないけれど、今聞かなくたっていつかは告げられるんだろう。
「凪のこと好きかも」
――決して届くことはない、想いを。