僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……かもって、何?」


くすりと笑えば、祠稀は組み直した胡坐へ頬杖をついた。


「俺、本気で好きになる感覚って分かんねーし。でも、今までと違うから、そうかなって話」


いろんな女子と経験のあるらしい祠稀がそう言うなら、本気の好きでいいんじゃないかと思う。


それを俺に言って、意見を聞きたいのか、協力を求めたいのか。祠稀はそのどちらでもない気がした。


「まあ、それだけ。一応言っとこうと思って」

「……うん」


俺が、凪と恋愛関係にあるのか。そんなことは考えなくても、祠稀の中では答えが出てるんだ。


敵視するわけでも、邪魔扱いするわけでもない。ただ好きなんだと、言いたかっただけ。


それで俺がどうしようと自由だし、祠稀がどうしようと自由だ。


俺が協力すると言えば祠稀は受け入れるだろうし、祠稀が凪に迫っても、俺は邪魔しない。


それは俺の行動が全部、凪次第だから。祠稀はそれを分かってるんだろう。


「……頑張って」


そう小さな声で言うと、祠稀はきょとんとしてから、口の端を上げた。


「意外。言われると思わなかった」

「……一応ね。……でも、凪を傷つけたら、怒るよ」

「ははっ。弟くんはコエーな」


端正な顔を、流れるように笑顔に変える祠稀に微笑み返して、他愛もない話を始める。

< 329 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop