僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……かもって、何?」
くすりと笑えば、祠稀は組み直した胡坐へ頬杖をついた。
「俺、本気で好きになる感覚って分かんねーし。でも、今までと違うから、そうかなって話」
いろんな女子と経験のあるらしい祠稀がそう言うなら、本気の好きでいいんじゃないかと思う。
それを俺に言って、意見を聞きたいのか、協力を求めたいのか。祠稀はそのどちらでもない気がした。
「まあ、それだけ。一応言っとこうと思って」
「……うん」
俺が、凪と恋愛関係にあるのか。そんなことは考えなくても、祠稀の中では答えが出てるんだ。
敵視するわけでも、邪魔扱いするわけでもない。ただ好きなんだと、言いたかっただけ。
それで俺がどうしようと自由だし、祠稀がどうしようと自由だ。
俺が協力すると言えば祠稀は受け入れるだろうし、祠稀が凪に迫っても、俺は邪魔しない。
それは俺の行動が全部、凪次第だから。祠稀はそれを分かってるんだろう。
「……頑張って」
そう小さな声で言うと、祠稀はきょとんとしてから、口の端を上げた。
「意外。言われると思わなかった」
「……一応ね。……でも、凪を傷つけたら、怒るよ」
「ははっ。弟くんはコエーな」
端正な顔を、流れるように笑顔に変える祠稀に微笑み返して、他愛もない話を始める。