僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


――俺の言った頑張れは、祠稀が捉えた頑張れとは少し意味が違う。


始まったばかりの恋が成就するよう願った頑張ってじゃない。


どれだけ伝えても届かぬ恋に、めげずに頑張ってという意味だった。


複雑だ。とても、とても。


凪を傷つけたら怒る、なんて。本当に傷つくのは祠稀なのに。俺は、最悪だ。


応援したい。協力したい。


でもできない。


それで凪が救われるのなら、いくらだって協力するのに。


祠稀が大事で、大切なくせに。それよりもっと、もっと、俺の中で凪は別次元だ。


他の誰とも比べることはできない。凪以上に大事で、守りたい人はできない。



「つうかさ。彗って、有須のこと好きなんだと思ってた。人としてじゃなくて、異性としてな」

「……俺、よく分かんないから。恋とか、愛とか」



俺はきっと、一生恋をしない。


もし、恋をしたとして。
……有須を、好きだとしても。


俺は、想いを伝えることはしない。


凪が、“サヤ”を忘れない限り。


凪が俺を必要とする限り、俺は凪のそばにいると、決めたから。


< 330 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop