僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


◆Side:有須


「どえりゃぁぁぁああ!!」


バシーン!と、豪快な音を立ててコートに打ち付けられたボールと、得意げにちょんまげを揺らす遊志先輩が、あたしの口を開けさせる。


大雅先輩の「ウザいなぁ、遊志って」と言う声を物ともせず、遊志先輩はスキップしながらこちらに向かってくる。


「どうやった!? 凄かったやろ~、遊志の魔球アタック!」

「魔球とか言う時点で終わってるよね」


というか、ただのバックアタックだった。居残り練習をしていた男子バレー部が固まるほど、威力は凄まじかったけど……。


卒部した大雅先輩が練習を見に顔を出して、それに着いてきた遊志先輩。


女子バレー部の練習はすでに終わり、あたしが祠稀を待っている時間を、2人は何も言わずに潰してくれる。



「遊志先輩って、バレー経験あるんですか?」

「大雅の練習に付き合うてたくらいやでっ!」

「やだなぁ、邪魔しに来てただけじゃん」

「っえー! ヒドッ! 来ればって言ったん、大雅やんけ!」

「何それ妄想?」


にこにこしながら言う大雅先輩と、泣く真似をする遊志先輩に笑っていると、体育館の入り口が開いた。


ひょこりと顔を出したのは祠稀で、あたしの姿を確認すると完全に体をドアの向こうから出す。


「ワリー。なんか白熱してた」

「ううん、お疲れさまっ!」


祠稀は謹慎が解けた後も、変わらずサッカー部に顔を出していて、最近は正式な入部に誘われているらしい。
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