僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「何すんのバガッ!」
「なんだよ、キスされたかったか?」
「ハゲ! 祠稀のハーッゲ!!」
「あぁん? 上等だコラ。つうかハゲてねぇよ!」
知らない知らない。祠稀のバカ!
いきなり何すんのよ!
「何騒いで……あれ……おかえり祠稀」
「あ、帰ってたんだね! おはようっ」
騒がしいあたしたちに目が覚めたのか、彗と有須が部屋を覗きに来た。
祠稀は呑気に「おー」と言い、あたしは赤くなる顔を隠すようにそっぽを向いた。
「凪がハゲハゲうっせーし」
「……未来予想」
「っけんな彗! 俺が禿げるわけねぇだろ!」
「ちょ、喧嘩しちゃダメ! ご飯っ、ご飯にしよう、ねっ!」
騒ぎながらリビングへ出ていく3人にあたしは着いて行かず、ベッドに横になる。気が抜けたのと、ドキドキする胸を落ち着かせるために。
「なんだアイツ。ふて寝か?」
「……いいよ、寝かせとけば」
「ふふっ。ご飯できたら起こしに来るね!」
ふて寝じゃないし、寝ないし。まずここ、祠稀の部屋なのに。
パタンとドアが閉まって、あたしは布団の上に顔を埋める。
……キスされるかと、思った。
というか、されてもいいと思った。
「……最悪」
くぐもった声は、自分を戒めるためには充分で。罪悪感を募らせるにも充分だった。
祠稀は、ダメ。
祠稀は、“そういう対象”に見ちゃいけないのに。
上がって下がった体温は、あたしの体が、祠稀を受け入れた証拠だ。