僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
静謐は嘲う
◆Side:凪
肌をくすぐる、ゴツゴツとした手。
生温かい舌に咥内をむさぼられながら、左手が太腿を撫で上げる。
豊満な胸を揉みしだかれれば、吐息ともつかない声が漏れた。
明かりのない部屋は情欲で満たされ、ベッドの上は決して静謐とは言えない。
乱れるシーツも、軋むベッドも、行為の激しさをそのまま表していた。
ぼやける視界に瞼をこすると、白い天井が目に入った。
――夢か。
そう思って、眠いなんて気持ちはなく、体を包んでいた布団を乱暴に剥いだ。
夢の中で抱かれていたのは自分だったのか、それとも客観的に見ていただけなのか。それすらもう、覚えていない。
どっちにしたってただの変態だ。
「……寒」
ベッドから降り、ブルッと身震いをしてから霞色のカーテンを開ける。ふと、等身大の鏡に映った自分に苦笑してしまった。
顔が真っ青なのに、スパイラルの赤い髪は鳥の巣状態。滑稽すぎる。
適当に髪を撫でつけながらベッドに放り投げられたままの携帯を拾い上げ、時刻を確認した。
午前5時過ぎ。どうりでまだ暗い。
先ほどよりも控えめに体を震わせると、温かいココアが頭をよぎる。
起きたらまず、ココアを飲む。何年も日課であるそれを求め、だるい足をリビングへと向けた。
生々しいセックスの光景を夢に見た自分を、軽く嘲笑しながら。