僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
――――…
「ほんっっとーに、ないんだな!?」
何杯目か分からないココアを飲んでいるあたしの顔に影を落とすのは、祠稀だった。
傍から見ればキスでもするのかってくらい顔を近づけてくる祠稀に、溜め息も出ない。
この朝のやりとりを、何回繰り返したんだろう。
「……祠稀、最近そればっかり」
至近距離にいた祠稀をあたしから引き離してくれるのは彗で、3人の顔を交互に見る有須は、いつ喧嘩が始まっても止められる準備をしている。
彗に襟元を掴まれた祠稀は眉をひそめ、椅子に腰かけた。
「だってそうだろーが! 彗に有須に俺! 次、凪に何かあってもおかしくねぇだろ!」
ここ最近の祠稀は、あたしにも何か秘密があるんじゃないかと疑い、それを問いただしてくる。
最初は何を言い出すのかと流していたけれど、あたしが思ってるよりも祠稀は本気らしい。
「あるならちゃっちゃと言えよ!」
なんて横暴なの、祠稀。
そうは思っても、祠稀も、有須でさえも、何かあるなら知りたいと目で訴えているのが分かった。
あたしはマグカップを置いて、秘密というものを考える。
他者に知られまいと、ひた隠しにしている事柄。
――そんなもの、在り過ぎてどれが秘密なのか分からない。逆に言えば、秘密なんてない。