僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……ごめん。考えたんだけど、秘密って何?」
「あぁ?」
祠稀がイラッとしたのが分かって、慌てて両手を突き出す。
「いや、だから! 質問されれば答えれるけど、秘密は?ってアバウトな質問されると、分かんないんだってば!」
そう言うと、祠稀は僅かに片眉を上げた。
あたしが言ったことは嘘じゃない。質問をされれば答えるけれど、質問されなければ答えないということだ。
それは、あたしという人間に辿り着くことができない質問しかしないと、分かって言ってる。
祠稀や有須が思う“凪”には、しないであろう質問。それがきっと、あたしの秘密になる。
「……じゃあ、細かく聞けばいいのかよ」
「うん、細かく。いつでもどうぞ」
考えるように黙った祠稀を見て、再びココアを口に含んだ。
……考えても考えても、あたしに秘密なんてないでしょ? あるかと思っても、その先は思い浮かばないでしょ?
あたしはそれほどまでに、完璧な“凪”を作りあげたんだから。
――違うか。
ひとつのことを取り除いたら、あたしは平平凡凡に生きて来た、どこにでもいる15歳。夢虹凪は、そんな女子高生。
でもたったひとつ、それだけはどうしても消えることがない。
秘密と言えたほうが楽な気がした。
あたしは知られたくないんじゃない。祠稀たちに知られる気なんて、毛頭ない。
この想いは、これ以上誰かに知られる前に消さなくちゃならないんだから。