僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
◆Side:有須
「聞きたいことがあんだけど」
朝食の時間、いつもより食べるペースが速いと思っていた祠稀が、箸を置くなり口を開いた。
その視線の先には凪がいて、すっかりいつも通りに戻った凪は、不思議そうに首を傾げる。
「何、改まって」
凪はおかしそうに笑い、お吸い物の椀に口を付ける。席を立って冷蔵庫から飲み物を取り出していた彗も、キッチンから祠稀に視線を送っていた。
「サヤって誰」
ゴホッ!と、凪は強く咳き込み、慌てて椀をテーブルに置いた。
……サヤ?って、……あ。
「ゲホッ、……あー……と、サヤ?」
「そう、サヤ」
まだ軽く咳き込む凪を視線から外さない祠稀と違い、あたしは何がなんだか分からない状況、ではない。
昨日、大雅先輩が言っていた。
『あー……だからあの時、泣き喚きもしなかったのかって、感じ?』
あの時、あたしを助けてくれた時。凪は自分の体を使うことに何の恐怖も、躊躇すらなかった。
挑発する余裕まで、見せていたと思う。
「えーと……話の腰を折るようだけど、どこでその名前知ったの?」
ティッシュボックスから1枚取って口元を拭う凪は、全く動揺してないとは言い切れない感じだった。
いつもと変わらないけれど、どこか表情に影ができてる。
祠稀もそれに気付いてるんだろう。ひと呼吸置いてから、あたしも知らなかったことを告げる。