僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「ひと言で言い表わせないんじゃない」
「あ、やっぱり? うーん、そうだよねぇ」
眉間に皺を寄せる凪は、彗の発言に小さく溜め息をつく。と、祠稀のほうを向いて「そんな感じ」と、答えになってない答えを言う。
当たり前に祠稀は納得いかないようで、テーブルに頬杖をついた。
「じゃあ何。結局サヤって奴は、凪の好きな奴なわけ?」
ムスッとする祠稀にきょとんとする凪は、考えるように少し宙を見上げると、誰に向けてるか分からない笑顔を見せた。
「まさか。心の底から大っ嫌い」
大嫌いという言葉を笑顔に乗せて言う凪に、あたしも祠稀も目を見張る。
嘘をついてるとか、はぐらかしてるとか。そんな風には思えなかったからこそ、どう反応すればいいのか分からなくて。これ以上突っ込むことが、躊躇われた。
「まぁ、叶わない恋ってかさ。恋人いたし、今は結婚してるし。それでもあたしは好きだったんだろうと思うけど、でも今は世界でいちばん嫌い。なんでって聞かれたら、んー……あたしを選んでくれなかったから?」
彗はただ箸を動かして、凪の言葉に耳を傾けているようだった。
あたしは相変わらず黙ったままで、祠稀は最初とは打って変わって、威勢のよさは消えている。
それでも聞き足りないんであろう祠稀は、きっと最後の質問をするために身を乗り出した。
「……それって、関係はあったってことか?」
「ほぼ毎日、一緒にはいたかな」
柔らかく笑う凪に祠稀はそれ以上何か問うことはせず、「ふぅん」と、話を終わらせた。
――世界でいちばん嫌いな人の名を、寝言で呼ぶのかな。
あたしは自分なりに頭の中を整理していたけど、結局何も口にすることなく、朝食の時間は過ぎていった。