僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「ぜってーまだ好きだよな」
部活が終わるのを待っていてくれた祠稀の第一声に、あたしは苦笑いを返した。
まさか、いや、あたしもだけど。1日中考えてたんだろうなぁ……。
「で、絶対今も関係持ってると思わねぇ?」
「う、うぅん……」
階段から腰を上げた祠稀は買っていてくれたホットココアを手渡してくれる。
「ありがとう。……やっぱりさ、彗が止めたからそう思うの?」
受け取ったココアを両手で包むと、少し熱いほどの温度が掌に伝わった。
歩き出した祠稀の後ろをついて行くと、「そうだろ」と低い声。
「俺の邪魔はしないみたいなこと言ってた彗が『やめて』だぜ? それって、サヤの話題は凪にNGってことだろ」
うん……それは、分かるんだけど。
恩人で? 叶わない恋で? 恋人がいて、今は結婚してるって……。
「……あたしを選んでくれなかったって、どういう意味だと思う?」
祠稀を見上げると、長い髪が風に靡いていた。横顔を見ただけで、なんて綺麗な顔をしてるんだろうと思う。
「さあ……やっぱ不倫じゃん? つーか今まで男の影なかったし、ってことは中学ん時の話だろ? 冗談キツいっつーの」
不機嫌そうに眉を寄せる祠稀は、言葉とは違う思いに表情を曇らせているんだと感じた。
「……凪ってさ……」
思わず口に出しそうになった言葉を、慌てて呑み込む。
「ううん、なんでもない」
「言えよ。凪は、誰かに求められたいのかなって」
ふっと鼻で笑う祠稀に、なんでかあたしが泣きそうになる。
あたしが泣いてもなんらおかしくはないんだろうけれど、我慢した。
祠稀のほうがよっぽどキツいんじゃないかって思ったから。