僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……違うよ。そんなことないよ」
「じゃあ、ひとりが嫌なんだね、とか?」
「祠稀……」
「別にいいべや。上等だろ。だから彗をそばに置くし、俺や遊志に期待持たせるようなこと言うんだってな」
……サヤさんは、凪を選ばなかった。
だから世界でいちばん嫌いなんだと笑った凪は、きっとまだサヤさんのことが好きなんだと思った。
それと同時に、愛されたい人に愛されない寂しさを、凪は他の誰かに愛されることで埋めてるんじゃないかと。
「同居人募集してたのも、そのせいかなぁ……」
「さぁ。でも、やたら心配性なとことか、自分より他人のことばっかなのは納得できるけど」
凪が嘘をついてるとは思えないけど、真実に限りなく近いようで、あからさまに遠い気もする。
「つーかまず、誰だよそのサヤって奴は」
「……あだ名じゃないかな? サヤ…カとかだと、女の人みたいだけど。チカみたいに、略したとか」
冷たい風に頬を撫でられながら、ふたつの影を並べて歩く。
見上げた月はどこかぼんやりしていて、それに寄り添うように瞬く星に目が眩んだ。
まるで、凪と彗みたいに思えたから。
……彗は、サヤさんを知っているんだろう。
凪の想いも、全部知ってそばにいるんだと、今日改めて思い知らされた気がする。
あたしなんかが、彗と凪の間に入れる可能性なんて0に近いんじゃないかと思ってる横で、「サヤサヤサヤ」と呪文のように呟く祠稀は、すごいと思う。