僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「サヤサヤサヤサ……チッ、威光系列で調べさせるか」

「え!? そんなことできるの!?」

「サヤがこの地域の奴ならなー。でも凪って中学こっちじゃねぇじゃん?」


あ、そっか。凪のお父さんは遠方から来てたから……。凪はひとりでこの街に引っ越してきたことになる。


「やっぱり、中学の時に何かあったのかな……?」

「傷心旅行的なノリでひとり暮らし始めて、同居人募集? ありえ過ぎて笑えないんですけど」


笑うとこでもないと思う……。


腕に何本ものペットボトルを抱えていく祠稀を見ながら、あたしも飲みたい物に手を伸ばした。


ふと目に入ったカップケーキに惹かれて、迷っていると横から伸びてくる、黒いマニュキアが施された綺麗な手。


「たまには食いたいもん食えば? そして俺にも食わせろ」


いつ持ってきたのか、カゴの中にカップケーキを入れてくれる祠稀に頬が緩む。


「へへ、ありがとう。祠稀ってほんと甘党だよね」

「うっせ」


ふたりで笑いながらレジへ向かい、「奢ってやる」と言う祠稀に甘えさせてもらい、コンビニを出た。


もうすっかり冬だと感じる気温は、吐く息を淡く白に染め上げる。


「あのさぁ、恩人って言われると、俺は救ってくれた人だと思うんだけど。有須はどうよ」


マンションへ向かいながら、祠稀の質問を頭の中で繰り返す。


……恩人、恩人かぁ……。あたしの場合だと、祠稀とか彗とか凪も入るんだけど……。


「お医者さん、とか……先生とか?」


あたしは一度、お医者さんのおかげで過食症が治ったし……恩人だと言える。
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