僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
狂騒カタルシス
◆Side:凪
まるで、猿だ。
「……凪……腰落ちてる」
ああ、犬か。
目の前に広がる鏡に映った自分が、あまりにもみっともなくて笑える。
真っ裸で、四つん這いになって、あろうことか尻を突き出してるなんて。冷静に見るとおかしくて堪らない。
ゴツゴツした手が右の乳房を揉みしだいて、もう片方の手はガッチリと腰を支えている。
背中を這う柔らかい唇と舌に、ゾクゾクと這い上がる快感は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
「……もう、限界?」
くすりと鼻にかかった笑いが、あたしの中心を熱くさせる。
汗で張り付いた髪を避ける気力もないほど体中ダルいけど、それは求めた倦怠感。
鏡越しに目を合わせると、獲物を捉えたような強い眼差しにぞくりとした。
「……まさか。足りないよ」
そう口の端を上げるとゴロンと寝転ばされて、向き合う形となってしまう。
「やだ、正常位ですんの?」
小馬鹿にしたように笑うと、反撃だとでも言うように、熱い手の平が太腿をユルユルと撫で上げていく。
もったいぶるような動きは最初こそいいものの、段々とじれったくなる。
求めるように、促すように、胸の突起を口に含んでいた彼の黒髪を梳くと、意地悪い笑顔が眼前に広がる。
顎を固定され、唇が触れたと思ったらすかさず入りこんでくる熱い舌。
あられのない声をあげ続けて乾いた咥内が、湿り気を帯び始めた。