僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……あ、そこでいいです」
タクシーに乗って、マンションの最寄り駅の前で下ろしてもらう。チクチクと刺さる様な冷気が、火照っていた体温を奪った。
……この前買ってきたファーのマフラー、してくるんだった。
ぼんやりそんなことを考えながら、やっぱりマンションの前まで乗ればよかったと少し後悔する。
朝5時の駅前はさすがに冬ということもあり、たむろしてる人はいなかった。
もう11月末に差しかかる。
テストが近いことが憂鬱で仕方ないけれど、今のあたしにとってテストなんてどうでもいいモノでしかなかった。
「――凪」
俯き加減にマンションへ歩いてたあたしは、現れた2足のショートブーツに目を見開く。声と言ったほうがいいかもしれない。
急速に込み上げた愛しさを押し殺し、おもむろに顔を上げた。
「な、に……なんでいるの……」
そこに立っていたのは、眠そうな目をしたいとこであり、義弟でもある彗だった。
少し鼻の先を赤くして、ズッと鼻を啜る彗はどう見たってかわいい。
驚くあたしなんてお構いなしに、低血圧なはずの彗は「迎えに来た」と微笑む。
なんで彗ってそうなの……天然のくせに、いつもどこか冴えてる。
「……え、……凪?」
その場にしゃがみ込んでうずくまるあたしに、駆け寄ってくる長い脚。
「……腹イタ?」
違う、バカ。泣いてるんだって、気付くでしょふつう。