僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……ん?」
離れて、あたしの顔を覗く彗の表情は決して困惑などしてなかった。むしろ、聞こえていたのに、まるであたしを試すような口調のようにすら感じた。
「抱いて」
そう、もう一度言うと、彗はただ……ただ微笑んで、あたしの手を引いて立ち上がる。
あたしは黙って、彗の少し後ろを歩く。
人気のない街中は静寂に包まれていて、今うるさい場所にはいたくないけれど、静かすぎるのは嫌だ。
どうせ静かなら、男と女の密室であってほしい。そんなことを思いながら、彗の横顔を見上げた。
向かう先は、彗の部屋か、あたしの部屋か、それともまたラブホテルだろうか。
何時間と経たない内にあたしは別の男に、しかもいとこで義弟の彗に抱いてもらおうなんて。
いったいあたしは、彗をなんだと思ってるの。
「寒くない?」
「……彗がいるから、平気」
それでもあたしは、彗に束縛じみた言葉を投げる。
彗がいなきゃ、平気でいられないと言ってるようなものなのに。
それを分かって微笑んでくれる彗を、性悪なあたしが手放せるわけない。
あたしの全てを分かってくれる人は彗だけで、彗だけでいい。
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