僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
◆Side:彗
バタン、と。ドアが閉まった音がした。凪がシャワーを浴び終わったんだろう。
凪の手を引きながら、適当にそれっぽいホテルに入った。
俺の鼓動が速まることなく規則正しく鳴っているのは、いつかこうなると思っていたからなのかもしれない。
よく分からないのが、正直な気持ちだけど。
俺が凪を抱く想像なんてできないし、容易に想像ができるのも事実で、祠稀や遊志先輩に申しわけないって気持ちが、ないわけでもない。
「……」
それでも今。
今、凪を慰められるのは俺しかいないのなら、俺は簡単に凪を抱ける。
抱くことで、凪が泣かずに済むなら。少しでも、笑ってくれるなら。
「……彗」
背後から声をかけられ、振り返る。
水に濡れて少しストレートの髪に戻ってる凪を見て、幼い頃の凪を思い出す。
ベッドに腰かけてる俺は微笑んで、手を差し伸べた。
「……彗はシャワー浴びなくていいの?」
そっと乗せられた凪の手を握り、目を伏せた。白いバスローブ姿の凪は、男なら誰でも色っぽいと思うだろう。
「うん。……終わったあとでいいや」
そう言うと「めんどくさがり」って凪が少し笑うから、俺は繋いだ手を引き寄せて、抱き締めた。
鼻を掠めるいつもと違うソープの香りが、ここはホテルなんだと改めて実感させる。