僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
凪の細い体をベッドに寝かせてから、見に纏っていた上着全てを脱いだ。
上半身裸の俺に見下ろされて、凪は虚ろな目をしたままゆっくりと俺の左頬に手を添える。その華奢な手に自分の手を重ねて、首を傾げた。
「……言っておくけど、俺、経験ないからうまくないよ」
「……教えてあげるよ」
教えてあげる、か。
そういえば前にもチカに同じようなことを言ってたけど、やっぱり今の凪は不安定だ。
心ここに在らず、そんな言葉が今の凪には当てはまる気がした。
添えていた左手を離し、そのまま凪の頬を撫でると、凪は俺の左手に視線を移した。その瞳に映るのは、手首にある無数の傷。
もう、古い傷しかない。ただ白く盛り上がる、蚯蚓腫れみたいな傷痕。
凪はそれに、生きた証だと言ってくれたそこに、キスを落とした。そうして俺に微笑みを向けた凪に、鼻の奥がツンとする。
嬉しいわけじゃない。
そうやって俺にすがる凪が、狂おしいほど愛しくて。儚くて、哀しくて。
いつか、壊れて消えてしまいそうで、どうしようもない感情が溢れ出したんだ。
「……赤い」
「……あたしの目?」
「うん」
赤くなってる凪の目元を親指で撫でると、再び涙が出そうだと思えるほど、熱を帯びていた。
ぎゅっ胸がつかえて、俺はそこに唇で触れる。
俺が凪の上に覆い被さることも、至近距離で見つめ合うことも、幾度となく経験したことだけど、これから先は初めてのことだ。