僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
凪もそれは、分かっているのかな。
今、何を考えてる?
――それとももう、何も考えたくないのかな。
相変わらず俺を見上げるだけの凪に微笑み、バスローブの紐に手をかけた。
締め付けがなくなったバスローブはゆとりを持ち、僅かに凪の体の上を滑る。
自ら脱ごうとした凪の手を掴んで、指を絡ませた。そのまま凪の顔の横に置き、もう片方の手でバスローブの襟元に手をかけた時だった。
凪が初めて、俺から顔を背けた。
「……」
露わになった鎖骨と谷間。そこに無数に散る、花弁のような紅い印は、何時間か前に付けられたものだ。
顔を背けたのはなぜかなんて、羞恥の思いがあったわけではないと分かる。
見られたくない、とか。後ろめたい、とか。罪悪感みたいな。俺に対する、申しわけなさ?
「……凪?」
呼べば、ちゃんと俺を見る。
……だけど見るのは、俺じゃなくていいよ。
「俺のこと、サヤだと思っていいよ」
目を見開いた凪に微笑んで……多分、ちゃんと笑って、バスローブと肌の間に手を滑り込ませた。
ガッと、勢いよく掴まれた俺の手は動きを止められた。
「……うまくは、ないけどね?」
「……す……っ彗……」
「……泣かないで」
緩く首を振る凪の瞳に、堆く涙が浮かぶ。
大きな瞳にいっぱいの涙を溜め、力なんていっさい入ってない俺の手を、小刻みに震える手で強く握り締める。