僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「あ、あたし……ごめ……っ」

「謝らなくていいよ?」

「彗はっ……彗は、サヤじゃないよ……」


ぼろッと落ちた涙は、頬ではなく目尻を伝って消えていく。それだけでもう、分かる。


震える凪の手を握り返してから、ゆっくりと離した。指を絡ませていた手も解いて、上半身を起こす。


すると凪は両手で顔を覆い、俺は解かれたバスローブの紐を結び直してあげた。


「ごめん、彗……ごめん……っ」

「……なんで謝るの」

「だって……あたし、最低っ……」


……いいんだよ。いいんだ。


俺は凪に抱いてと言われれば抱くし、やっぱり無理と言うなら、抱きはしない。


俺だって最低だ。いや、最低なのかすら分からない。


だってそうでしょ?

俺と凪の関係は、持ちつ持たれつとか、そんな言葉じゃとても言い表わせられない。


俺がいるから凪がいて、凪がいるから俺がいる。


他人の理解の範疇を超えてるなんて、今さらなんだよ。



「――凪。俺は、凪がいて幸せだよ?」

「……どうして、見捨てないの……っ」

「……」


少し、驚いた。


今まで、俺がいるからとか、俺は他の人とは違うとか。束縛じみた、重い、でも決して居心地は悪くない言葉は言われてきたけれど。


どうして、なんて聞かれたのは初めてだったから。


両手で顔を覆ったまま、前髪を強く握りしめる凪。その下で流れ続けてるであろう涙を止めたくて、濡れている髪に触れた。
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