僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「世界でいちばん大事だから」


そう、たったそれだけ。


「守ってあげる。そばにいてあげる。凪が望むまで、ずっと、一生でもいいよ。俺だけは、凪の味方でいる」


たったそれだけのことだよ。


「……分かった?」


凪の両手を退けて顔を覗くと、きつく寄せられた眉の下で、大きな瞳が俺を睨み上げていた。


怒ってるわけでも、疑ってるわけでもない。


泣くのを我慢してる、子供だ。


「……言っていいよ。泣いても、いいから」


今日だけは、泣きやませる必要はないかもしれない。


ここは家じゃないし、有須も、祠稀もいない。


「俺しか聞いてないよ」


そう言った瞬間、細い腕が首に巻きつく。抱きあげて、俺の胸に顔を埋める凪の嗚咽を聞きながら目を閉じた。


「赤ちゃん、できたって……っ!」

「……うん」

「幸せそうに……っ赤ちゃん生まれるの……た、楽しみだって……なんで……あ、あたし……っ」


震えて、上擦る声で喋る凪を強く抱き締める。背中を撫でてあげたかったけれど、厚手のバスローブは俺の体温をちゃんと伝えてくれない気がして。


壊してしまわないように、腕の中に納まる愛しい存在を包んだ。



「ねぇ、あたし……間違ってる? サヤの幸せなんか、壊れればいいって、思っちゃダメなの……っ?」

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