僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「受験生じゃん!」


フィルターをくわえたチカから煙草を取り上げる。


「身長伸びないよ!」


チカは意味がなくなった自分の手を見て、やがて口の端を上げてあたしのほうを見た。


「背がなくても、大人にはなれるでしょ」


ゆっくりとあたしの手から再び煙草を取るチカに、何も言えなかった。


確かにそうだけど、と思ったわけじゃなくて、真似事かと感じたから。


早く大人になりたいと言ったチカの言葉が、急に意味ありげな言葉に思える。


大人の真似をしたって、大人になれるわけじゃないのに。


「……煙草おいしい?」

「んー。別に、ふつう」


それでもチカは、煙草を吸うんだ。


「チカ、あたしの友達に似てる」

「ふぅん? 誰かは分からないけど、僕に似てるなんて不憫だね」


……それ。何かを諦めてるっていうか、自分に執着してない感じ。どこか一線引いて、ふいに余所余所しく感じさせるところ。


祠稀に、似てる。

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