僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


目を伏せた凪が瞬きするたび、肌に落ちる睫毛の影が揺れる。


彗は相変わらず黙って、祠稀はともかく、あたしは理解するのに精いっぱいだ。


凪は、サヤさんとの未来は望んでないの? じゃあ、どうして会ってるのか……。


「サヤさんを想い続ける気は……ないってこと?」

「当たり前じゃん! あたしそこまでバカじゃないよっ」

「……じゃあ、なんで会ったりすんだよ」


祠稀の質問に、凪はふっと笑みを零す。


「育った気持ちをすぐに消すことなんて、できる?」

「……」


……できない。

考えなくたって、あたしは彗への気持ちをすぐ消すことなんて、できない。


「これでも、何度も諦めようと思ったんだよ。でも無理で、忘れることができなくて、叶わないことも分かってて……だから、抱いてもらって寂しさを埋めてるの。いつか忘れられるように、消えるように……だから今のほうが、大事なの」


今一瞬が大事なのは、これからサヤさんと関係を続ける気はないから? 忘れる、消す努力をしてるから?


……続ける気はないなら、そう考えてるならよかったけど。


「……あ、の…抱かれてるんでしょ? それじゃあ、もっと好きになるんじゃないの……? もっと、つらくなるんじゃないの?」

「抱かれないほうがキツいんだ」


――キンッと、祠稀のジッポが音を立てる。まっすぐあたしを見つめて言った凪から、視線を逸らした。


言葉が出なくて、もうなんて言えばいいのか分からなくて。


俯いて、隣で煙草を吸う祠稀が何か言ってくれないかと思うあたしは、どれだけ役立たずなんだろう。
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