僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「抱かれれば、誰でもいいのか?」


祠稀のひと言に顔を上げると、凪はマグカップに伸ばした手を止めていた。


「アイツ、凪は押し倒されれば誰にでも股開くって言ってたぞ」

「……ああ、聞いたよ。会ったんだよね? 感じ悪かったでしょ」


知ってたんだ……。隠すつもりはなかったけど、怒らないのかな?


祠稀も少し驚いた顔をしてから、くすくす笑う凪にムッとして再び口を開いた。


「悪いなんてもんじゃねぇよ。最悪だよ、最っ悪」

「ごめん、それ嬉しい」

「……あぁ?」

「ヤキモチ妬いたりすると、意地悪なこと言うの。挑発したり。だから印象が最悪って聞いて、嬉しい」


幸せそうに笑う凪に、あたしはやっぱり何も言えなかった。


騙されてるんじゃないかとか、思わなくもないけど。凪がどれだけサヤさんを想ってるかのほうが伝わって、つらい。あたしはその想いを、応援できないと思っているから。


「……俺はその挑発にまんまと掛かったってことかよ」

「うはは! マジで? ……優しいよ、あたしにはちゃんと」


凪は昨日のことを思い出すように肩へと右手を乗せる。


まるで、まだ体にサヤさんの温もりが残っていると言うようなその仕草は、とても女性らしく、綺麗に見えた。


「ごめんね。ふたりは、あたしのこと止めたかったんだよね」

「……そうだよ」


悔しそうに声を出した祠稀は、あたしと同じように無理だと感じただろうか。


今の凪を止めることなんて、できる?
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