僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「と、いうわけで。サヤのことは秘密で、パパに男のことを聞かれても適当に流すってことでよろしく! じゃ、夕飯の準備しよう」


にこっと笑った凪に続いて彗も立ち上がり、ふたりは夕飯のメニューを話しながらキッチンへ向かった。


まだ、ドクドクと心臓がうるさい。


ちらりと隣を見遣ると、祠稀は眉間に深くシワを刻んでいた。


「……そんなこと、ぜってーさせねぇ」


小声で独白をこぼした祠稀に、心の中で大きく頷いた。


凪が出ていくなんて、絶対に嫌だ。


大丈夫、黙っていればいいだけ。


たったそれだけのことなのに、凪のお父さんに会えることが、楽しみから緊張に変わる。



――何も、起こりませんように。


ただそれだけを祈って、あたしと祠稀はキッチンへと向かった。




この時あたしたちは……あたしと祠稀だけは、未だに気付いていなかった。


サヤさんが言った、“君たちが知ってる凪なんて、一部でしかない。”その意味を。



あたしたちが知ってる凪は、作られた凪の一部であることを。


あたしたちが知ってる凪は、嘘の塊なんだということを。


……あたしと祠稀は凪の思うままに動かされていたんだと。


まだ、まだ、その時まで。


気付かない――…。



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