僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
揺蕩う心奥
◆Side:凪
12月、テスト全てを無事終えた昼下がり。あたしは廊下の隅っこで、携帯を耳に当てていた。
「うん、じゃあ……夕方に」
ピッと電話を切って、溜め息をついた時。
「凪~! テストお疲れ!」
「出来はどうだった? ダメそうだけど」
「大雅、ひと言余計」
相変わらずのオレンジ頭をちょんまげにした遊志と、意地悪なことしか言わない大雅があたしの目の前で止まる。ふたりはそれぞれダウンを着て、鞄を持っていた。
「帰るとこ?」
「そうやでぇ~。凪も一緒に帰る?」
「こんなとこで何してたの? 電話?」
遊志の声なんて聞こえませんとでも言うように、大雅があたしの手に納まる携帯を指差す。
「うん。今日パパが来るんだ。そのことでちょっとね、電話してた」
「え!? 凪の親父さん!? ……アカン、どうしよう大雅。挨拶に行かなっ!」
「はは。なんの関係があって? ただの先輩なのに?」
「グッサー! 鬼や……。凪、大雅ひどいと思わん?」
「えー、別に?」
けたけた笑って、あたしは遊志の気持ちを知らないフリをする。だけど遊志は最近……。
「俺のどこがアカンの! こんなに好きやのに!」
積極的で、ちょっと困る。
ガッと肩を掴んできた遊志の手を見ながら、あたしは「う~ん」と考えるフリ。悪いけど、考える余裕も答える暇も、今のあたしにはない。
そんな様子を見ていた大雅は腕時計を確認して、助け船を出してくれる。
「時間はいいの? 有須たち教室で待ってるんじゃない?」
「あっ! じゃあごめん、またね! ふたり共勉強頑張ってねー」
「俺は受験なんて関係あらへんのにぃ~!」
うるさい遊志に大雅は鉄拳を食らわせて、あたしは笑いながら教室へ向かった。