僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「チカは凄いね……」
曲げた膝に顎を乗せて目を瞑ると、風の音とチカの声が混ざり合う。
「なんで?」
だって、あたしには無理だったもの。
『あたしと大切な人以外』で世界を別つなら、あたしの世界にはふたりしか残らない。
それほど恐ろしいことはない。
それほど望むことはない。
だからあたしは、逃げたの。
「……ひとりだけって言い切れるのが、凄い」
あたしは大切な人以外、大事にしない。
きっとその他の人たちを、押し潰された煙草のように傷つけると思ったから。
……いらないとさえ思っていた。
優しくしてくれる人を。
大事にしてくれる人を。
愛してくれる人を。
あたしは、サヤ以外いらないと思っていた。
「ふぅん? でも僕、凪も凄いと思うけどなぁ」
ねぇチカ。君は、強いね。