僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……俺らにだってできること、あんだろーが」
「できないから頼らないんだ」
素早く言った彗に、面食らう。
また決め付けやがったと口を開く前に、彗は俺の首に手を伸ばした。
まるであの時、俺の首を絞めようとした時みたいに、身の毛がよだつくらい冷淡な瞳をして。
「緑夏さんを殺したいんだ」
「……な、に……」
「どうすればいいと思う?」
「何バカなこと言ってんだよ!!」
首に絡み付いた彗の手を振り解くと、ヒラリと舞うように彗は1歩後ろに下がった。
ゾッとするような、諦めにも似た微笑みを浮かべながら。
「ほら、頼りにならない」
「……彗……」
「分かる? 凪がどれだけ颯輔さんを、サヤを愛してるか。緑夏さんをどれほど憎んでるのか、分かるの?」
分かってる。どれくらい愛して、憎んでるのかぐらい想像できる。
でもきっと、想像は想像でしかなくて。
「……祠稀も有須も、凪の気持ちなんて理解できないでしょ?」
しょせん他人の心なんて、完璧に理解できない。
でも、それでも。
『凪のこと……見ててあげて。欲を言うなら、支えて、守ってあげてほしい。凪は全部、ちゃんと話してないんだよね? ……でも、焦らないで。凪が元気ないところ見せるなんて、心許してる証拠だから』
俺は颯輔さんが言ってくれた言葉を、信じたいんだ。
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