僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「やった! ありがとうっ」
「どういたしまして」
チカは携帯をパーカーのポケットに閉まって、顔を隠すようにフードを直した。
その様子を見ながら、はっきりとチカの顔が見たいと欲が出る。
「ねぇチカ、フード取ってくれたりしない?」
「……今度ね?」
ダメか。声のトーンが落ちた。
「じゃあね、凪」
「うん、またね」
チカは口の端だけ上げて去って行った。その背中を見送ってから初めて夜だと気付く。
チカの後ろ姿が、あまりにも夜に溶け込んでいて。先ほどまで隣にいたはずのチカが、まるで別人のように感じた。
……夜は連絡取れない、か。
受験生だから? でも、呼び出されたって言ってたし……。
やっぱり、祠稀と同じタイプな気がしてきた。
「……ふぅ」
なんだかずっと緊張していた気がする。