僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……分からせてよ。ねぇ彗、……理解できないと思うなら、あたしたちに理解させようとしてよ。どうしてそれができないの?」


理解できないから要らない、じゃなくて。


理解してほしいから聞いて。が、いい。


「……壊れてもいいなんて、言わないで……」


涙で視界が滲む。暖房機の音が耳の奥で響いて、空気が悪いのか、頭がぼんやりしていた。


「彗は、凪が望むならなんでもするの? ……そんなの、都合のいい操り人形じゃない……」


言ってはいけない言葉だと思っていても、他に言葉が見つからない。他に、表す言葉が見つからない。


「……凪を守りたいって、傷付けたくないっていうのも分かるけど。彗は凪を……甘やかしてるだけだと思う」

「俺もそー思う」


あたしの震える声を後押しするように、祠稀が同意してくれる。


大丈夫、そう自分を奮い立たせていると、溜まった涙が落ちて視界をクリアにさせた。


すると、彗が軽く咳き込みながらソファーに座り、あたしと祠稀も顔を見合わせてからカーペットの上に座る。


「……俺が、凪と文通してたことは知ってるよね」


……文通?
どうして今、そんな話……。


「俺は中学に上がって暫くしてから、返事を出さなくなったんだ。……それでも凪は、俺に手紙を出し続けて」

「知ってるし、それがなんだっつーんだよ。話ズラすな」


苛立った様子で祠稀が言い、あたしは牽制するように祠稀に視線を送った。舌打ちした祠稀は黙り、彗は再び話し出す。


「……早坂先生と凪の関係の経緯は聞いてると思うけど。早坂先生の専門は何か知ってる?」

「は? 何って……内科の医者じゃねぇのかよ」

「心療内科」


……え?
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