僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


きっと祠稀も、目を見開いただろう。そして自分のことが、恥ずかしくなる。


凪も彗も、あたしたちの単純さを、詰めが甘いことを分かっていたんだ。


祠稀のお母さんの担当医だって言うから……てっきり……。


「凪は元々寝付き悪いけど、中学に上がってから酷くなって、早坂先生のカウンセリングを受けてた。不眠症になったのは中2になる前」


彗は長めの前髪を邪魔そうに横へ梳かしながら、リビングのどこかを見ていた。


……不眠症だと言うことを忘れてたわけじゃないけれど、そこまで重要に考えていなかった。


……きっとそれも、凪が彗に協力を仰いで、そう思うように仕向けたんだろうけれど。


なんて、嫌な女だな……あたし。


「……サヤとほぼ毎日一緒にいた。って凪は言ってたでしょ。……どっちのことも言ってるんだ。凪は颯輔さんと一緒に住んでたし、毎日のように早坂先生のカウンセリング受けて…って言うより、話し相手みたいなもんだったらしいけどね」


まさか早坂さんが心療内科の人だなんて、真実を聞いても想像がつかない。


祠稀とふたりで早坂さんに会いに行った時。


いくら医者でも切羽詰まってたあたしたちに、凪の病名くらい教えてくれたっていいじゃないと思っていたけど……。


『アンタ、凪の担当医だったのか?』

『あ、悪いけどその話はできないよ。仕事上無理。それがなくても、凪に怒られる』


……あれは、プライバシーを守ることだけじゃなくて、カウンセリングで颯輔さんの話をしてたから?


つくづく自分はバカだと思うと同時に、早坂さんの意地悪さを思い出すと、メスを持ってるほうが似合ってる気がした。
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