僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「……で? カウンセラーの早坂と出逢って、なんでその後不眠症になんだよ」

「……祠稀っ……」


あんまり急かすように言うものだから、思わず名を口にしてしまう。


なんだよという目を向けられ、あたしは眉間にシワを寄せただけで、彗に視線を戻す。


言葉の続きを考えるように間を置く彗。


人と話すのに慣れていない、会話を続けるのが苦手な彗。そんな彼が今さらになって懐かしく、愛しく思う。


変わってないと思うには四六時中一緒にいすぎて叶わず、こんなに話してるのは凪のことだからと思うと切なかった。



「……颯輔さんと緑夏さんが付き合ってるのを知った時、凪は中1。俺が、手紙の返事を出さなくなった頃だよ。……夏だったかな……凪がサヤを、颯輔さんを好きだって気付いたのは」


――ああ、なんだか。
泥濘の中を歩いてる気分。


「……どうして、気付いたの……」

「見たくないものを見たから」


彗はあたしの瞳を見てはっきりと言った。先に視線を落としたのは、あたしだった。


心の奥底で、じわりじわりと得体の知れない黒いモノが滲み出す。


「……凪は、颯輔さんのことを好きかも知れないって悩んでる時に、颯輔さんと緑夏さんがセックスしてるとこを見ちゃったんだ」


――電気が走ったというより、体中の皮膚全部引っ剥がされた感覚だった。


隣に座る祠稀の体が強張ったことが分かり、その心奥まで伝わりそう。


……まさか。


「だから、眠れなくなった。心の底から傷付いたから」

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