僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
凪の話。
訊きたかった凪の話で、本当はどういう経緯で早坂さんと関係を持ったのかも知れた。
颯輔さんを愛してることも、緑夏さんを憎んでることも、数分前よりも分かった。
どうして不眠症になったのかも知れた。
――だけど。
「……凪は、俺を求めてきたよ。助けてって、眠れないって。……ひとりが、怖いって。それなのに俺は、俺だけ傷付いてるみたいに。俺のほうこそ助けてほしいって……全部無視したんだ」
あたしには、凪と彗の話に聞こえて仕方がない。
「凪はもう、俺に手紙を書くのをやめた。……それからだよ、凪が中2の時から早坂先生……だけじゃないけどね。サヤの身代わりにして、色んな男と関係を持ち始めたのは」
……分かってなんかない、あたしは。
ねぇ、彗。……間違ってる。そんなのは間違ってる。
そう、言えばいいのに。
「凪が実家を出たのは……早坂先生との関係がバレたからだと思ってたでしょ? そうじゃない。凪が、気持ちを隠しきれなかったから。……祠稀は、颯輔さんと電話で話したでしょ。なんて言ってたか、覚えてる?」
「……話せる人ができたんだって。……凪が家を出て幸せになれるなら、どこか……拠り所ができるならそのほうがいいと思った、って」
―――もう、嫌だ。
あたしは座ったままだらりと頭を垂らし、両手で顔を覆った。
「……そう。他には?」
「は? ……凪はもう、報われない恋はしてないか、って……おい、ちょっと待て……俺は、サヤ……早坂との関係知った時、怒らなかったのかって聞いたんだぞ」
「……それで、なんて返ってきたの?」
「……」
黙る祠稀は、あたしと同じことを考えてるんだろう。