僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……掻き回してほしくないんだ」
颯輔さんが想いに気付いていると、凪に告げたら。
凪が、愛してると颯輔さんに告げたら。
どうなるかなんて、想像すらできない。してはいけないとさえ思う。
もし。もしそうなったら、自分はどうすればいいのかなんて分からない。何もできないのかもしれない。
分かるのは、このままじゃ凪が壊れてしまいそうだということ。
―――そして、そんなギリギリで保たれた家族を、壊れそうな凪を支えているのが、彗なんだということ。
「……俺が手紙の返事を書いてたら、凪はもっと、苦しまずに済んだかもしれない。自分の体を、物みたいに扱うことも。嘘ばかりついて生きていかなくても、済んだかもしれない」
そんな責任を感じることなんてないと言えばいいのに、言えない。
「……凪を甘やかしてるとか、凪にとって俺は都合のいい奴だとか、どう思われてもいい」
彗の後悔を、償いの気持ちが、分からないわけじゃない。だけど、そんな気持ちは持ってほしくなかった。
矛盾して、わけが分からない。
涙が、止まらない。
「俺は誓ったんだ。自分に、凪に。この世で凪を救えるのが俺だけだとするなら、なんでもしてみせるって。救えないのなら、共に生きるって。……再会した時に、俺のリスカを咎めなかった時に、誓ったんだ」
そう、いくら間違ってると言ったって。責任を感じることなんてないと言ったって。
決めたのは、彗だ。
今の状態のままでいいわけがないと言ったって、今あたしに何ができるのかと問われても、答えることができない。
あたしも祠稀も、彗と凪と出逢ったのは8ヵ月前。比にならないほどの共有した時間が、彗と凪には存在する。
「俺は一生、凪のそばにいる。それが俺の、生きる意味だから」
――お願い。
誰か、時間なんて関係ないと言って。
そう思わせる勇気を、あたしにください。
このままじゃふたりは、伸ばした手も届かないほど、どこまでも堕ちていってしまう気がしてならない。
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