僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……みじかっ!」
砂糖たっぷりのフレンチトーストが突き刺さったフォークを持ちながら言うと、サヤはココアを飲みながら首を捻る。
「毎回毎回、なんだってこんなに短いかな!」
左手に持った手紙を揺らすと、サヤは大袈裟に吹き出して喉仏を上下させた。
「あははっ! なんだって? 元気だった?」
「元気も何も、ウンとかそうなんだとか。手紙でも相槌しか打たないのかって話だよね!」
「彗ってほんと、不器用でかわいいなぁ~」
でれっと頬を緩ませるサヤに、フォークを投げつけてやろうかと一瞬だけ思う。
「それに、中学の勉強そんなに難しくないよって。あたしと彗の頭を一緒にするなって感じ」
「凪、それは僻みって言フブッ……!」
「何? それはあたしに頭悪いって言ってるのかなぁ?」
彗からの手紙を投げつけると、サヤは「違うよ!」と焦る。それを無視して、あたしは残りのフレンチトーストをたいらげた。
「なーぎ。ほら、ダメだよ投げちゃ」
お皿を洗って濡れた手を拭いていると、サヤが隣にやって来る。その手には、綺麗に封筒に戻された彗からの手紙。
「待ってたんでしょ。来たんだから、大事にしなきゃ」
「……うるさい」
「はいはい。彗は不器用だけど、凪は素直じゃないねぇ~」
「~もうっ、うるさい! サヤ、最近親父くさい!」
乱暴に手紙を奪い返すと、サヤはよろりと体を揺らした。
「おや、親父て……俺まだ29なんだけどな……」
ショックを受けているのが見て取れて、これから何かあるたび言ってやろうと決めたあたしは部屋へ戻った。